伊吹山麓峠のシシ垣の調査と活用

橋 順之(滋賀県米原市教育委員会)


伊吹山麓「峠」地域のシシ垣は、滋賀県米原市大久保字峯堂ならびに小泉字峯堂・峠平にある。 現地は標高約300m前後の姉川に張り出した台地で、石灰石採石場の真下に展開するこの台地を通称「峠」とよぶ。 肥えた土壌や寒暖の差、山から吹き降ろす風などの自然の恵みを受けて、畑作地として利用されてきた。

シシ垣は、この台地全体を山から遮断するように構築されている。文政7年(1824)、 浜松藩役所へシシ垣構築を願い出た文書(小泉藤田家文書)には、峠畑の大豆などの作物が「獅子(猪鹿)」に 荒らされて捨てて置けない状態で困っていることがつづられている。シシ垣の総延長は約2,520mである。米原市 教育委員会では平成23年3月にシシ垣の測量をおこなった。その結果、きれいに面を整え、石と石の角を丁寧に あわせ、栗石やコーナーの算木積みなどで石垣の強度を高め、大きな石で安定性を持たせるなど、随所に専門的な 技術を観察することができた。これは、シシ垣の構築に専門の技術者の指導があったことを想定された。

パンフレット「伊吹山の山岳寺院」表紙

さて、このシシ垣を、これから永く後世に伝え残していく方策のひとつに「文化財の指定」がある。 指定によって、遺構を乱雑な開発から守り、整備・活用に向けた調査(測量・発掘等)によって当時のようすを復元し、 将来にわたって活かしていくことができる。米原市教育委員会では、上記の最も重要な個所を、土地の構築物(遺跡) として「史跡」に指定する準備を進めている。

また、現地にはすでに看板が設置されおり、市教育委員会で作成した パンフレット「伊吹山の山岳寺院」でも初めて公の刊行物にも掲載した。このパンフレットを活かし、見学会や公民館の 歴史ウォークなどを開催してシシ垣を案内した。峠地区は史跡と自然が凝縮した地域である。探訪ルートの設定やマップを 作成して、人が訪れ、交流などができる空間にしていきたい。










地図(「伊吹山の山岳寺院」より)

解説(「伊吹山の山岳寺院」より)